今年も8月6日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)が始まる。球場の外野スタンド内にある甲子園歴史館には、球児たちの戦いに加え、それらを約90年にわたって見守ってきた球場の記憶も展示されている。
■「アルプススタンド」だけじゃなく「ヒマラヤスタンド」もあった?!
内野席と外野席の間にある「アルプススタンド」。この甲子園独自の造語を最初に用いたのは、芸術家、岡本太郎の父で漫画家の一平さんだったというのは有名な話だ。1929年、白いシャツを着た観客で埋まるスタンドをこのように表現した、登山家で朝日新聞に勤めていた藤木九三(一緒に観戦していた太郎という説もある)の言葉を受け、漫画に添えて朝日新聞に掲載したという。
これに対抗して、1936年に外野スタンドが新装された際は、同じく朝日新聞で「ヒマラヤスタンド」と命名、紹介された。しかし、語呂が悪いせいか定着せず、自然と呼ぶ人はいなくなったそうだ。
■戦車大展覧会にスキージャンプ大会、球場で開かれた「珍イベント」
野球の試合がない時は、コンサートなどが開かれている甲子園球場だが、戦前には今では考えられない変わったイベントが行なわれていたのをご存知だろうか。
例えば、1938、39年と二年連続で開催された「全日本スキージャンプ甲子園」大会。相当大掛かりな大会だったようで、当時の写真を見ると、左中間スタンドに大きなジャンプ台が造られ、台の上は雪で覆われている。わざわざ新潟から貨物列車で雪を運んだというが、雨などで溶けなかったのは幸運だったとしか言えない。
さらに39年に開かれた「戦車大展覧会」では、様々な戦車が、グラウンド内に特設された小山や沼地を走っていたそうだ。なお、現在は芝生の保護のため、基本、車両が立ち入るイベント等は実施しない。他には、鷹狩りや野外歌舞伎、馬術大会なども行われた。