吉:今乗っている自転車が完全にそのパターンで、前はスポーツ車に乗ってたじゃないですか。それが古くなって、貰い手が見つかったんであげて、新しい自転車をすげえ久しぶ買うことにしたんです。ワクワクしながら色々調べて買ったのが、ブリジストンの普通のオヤジ仕様のもので。

伊:カゴついてるもんね。

吉:これについている三段変速のギアがつまんねえ、つまんねえ。こんなの意味ねーよって。色は気に入ったの。でも俺、カゴは欲しいけど、スポーツ車が欲しかったんだって。

伊:メモしてる知り合いもいるもんね、吉田買い物失敗図録みたいな。色々失敗してるもんね。

吉:僕より圧倒的に宅配便の荷物が来るのは伊藤さんで、ちょこちょこ買ってるよね。伊藤さんが朝日新聞で連載しているエッセイで、タオルの話をしたら反響があったんですよね。

伊:一人暮らしの女性はある日、タオルを全部同じものに揃えていいってことに気づくんですよ。そして、ふわふわのかわいいタオルを揃えておくんですよ。私も、ちょっといい女っぽいじゃんって(笑)。で結婚したら、ふわふわの対極にあるウスウスの、旅館とか温泉のタオルが混ざってきて。ああ、吉田さんはタオルにこだわりのない人なんだなって、それを捨てはしないんだけど、古くなったら油を吸わせたりしてた。そしたらある日突然、改まって、「俺はふわふわのタオルだと、体を拭いた気がしない」とか言って。ウスウスにこだわりがあって使ってた、と告白されて。それを朝日新聞のコラムで書いたら大反響で、ウスウス派が結構いた。

吉:「うちの旦那がそうです」みたいなのが多かったですよね。考えたんですけど、ふわふわのフェイスタオルっていうのは、手ぬぐいよりひとまわり大きいサイズですよね。あれはバスタオルの仲間だから、絞れないじゃないですか。多分、温泉旅館のタオルっていうのは、風呂入って体こすったりして、絞るところまでがワンセットなんですよ。

伊:ウスウス派の人が言うには、タオルでパーンと拭いたときに、垢をパーンと取っているから、もう体を洗っているんだって。

吉:僕も上京して、しばらくは銭湯に通って暮らしてたんだけど、そこで色んな作法を覚えるじゃないですか。股にパーンとやる作法とか(笑)。で、最後には今まで母親に洗って干してもらっていたのを、自分がしなくちゃいけないじゃないですか。だからふわふわの厚手の、なんて選ぶ余地が全然なくて。そのときの意識のままオヤジになったということなんだよね。

伊:結婚して5年くらい黙ってるというのがすごいなあと思って。

吉:そのときは俺のウスウスのがあるから、それを使ってたのね。そっちがウスウスを邪魔だなと思ってるということは、俺のほうこそ知らなかったですよ。

伊:こういうのはなくしたいと思ってたの。だから買い足して、どんどん減らす方向に。

吉:下高井戸のそば店のやつとかね、俺の宝ですよ。

伊:箱根のかっぱ天国が新作で入ってるよね。

吉:足湯のね。だって名前の入ってないタオルなんてつまらないじゃない、とすら思う。

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