
近年はデジタルデバイス(電子端末)が発達し、どこの家庭にもスマートフォンやタブレット端末がある時代になった。平成24年度の内閣府の調査によると、小学生の携帯電話所有率は27.5%。そのうち7.6%がスマートフィンを利用している。さらに、幼少時からスマートフォンのインターフェイスになじみ、いつの間にか写真や音楽を勝手に楽しんでいる姿はもはや珍しくはない。このようデジタルデバイスとの接触機会が増えると、有害サイトへのアクセスなどが問題となることも多い。子育てを考えるにおいて、デジタルデバイスをどのように活用するのかは重要な課題のひとつのようだ。
こうした現状があるなかで、2013年7月13日、東京大学・福武ホールにて、株式会社ベネッセコーポレーション主催の「こどもちゃれんじ25周年記念シンポジウム」<デジタル化時代の幼児の学び>が開催された。同シンポジウムでは、子どもの成長過程において欠かせなくなっているデジタルデバイスが、子育てをどう変えていくかについて議論された。
マサチューセッツ工科大学<MIT>教授であり、MITメディアラボ副所長の石井裕氏は基調講演のなかで、「海外雄飛」、「他流試合」、「己知敵知」、「破壊創造」と、刺激的なキーワードを提示。石井氏いわく“世界に飛び出し、競争を通して多様な価値観を認め、異質なものを排除するのではなく、お互いを尊重し、共通点をみつけて未来をつくりあげていくこと”が重要なのだという。そして幼児期には、「なぜ?」という好奇心を温めることが必要であり、多様な価値観を形成する基本となっていくそうだ。
基調講演後にベネッセ教育総合研究所より報告された、「乳幼児の親子のメディア活用調査」によれば、乳幼児のいる母の6割がスマートフォンを活用、スマートフォンを使用している母を持つ2歳時の2割超が、「ほとんど毎日」スマートフォンに接しているという。この報告を受け、子育てをする家庭にも、次々はいりこんでくるデジタルメディアにどう関わっていけばよいかを、石井氏、菅原ますみ氏(お茶の水女子大学大学院教授)、佐藤朝美氏(東海学院大学専任講師)がパネルディスカッション形式で語った。
「大事なのはアイデア、情報、知、メッセージ、そして人。メディアはそれを広げる手段であり、そこにメッセージとしての本質があるかどうかが重要。Facebookでも、万年筆で書いても構わない。大事なのはデジタルかフィジカルかというメディアスタンスだけじゃなく、メッセージに本質があるかどうかです」(石井氏)
「メディアの進歩は日進月歩で親がついていけないことも。そんなときは、親も新しいメディアの発見を楽しめばよいと思います。個人的には、今まで物理的に疎遠になっていた祖父母との関係を、メディアを使って復活させられたらいいなと。もちろん、単身赴任で遠いところに住む家族でもよいと思います」(佐藤氏)
新しいメディアと上手に付き合っていくためには、必要以上に怖がらず、進化を面白がって適応することが大切なようだ。デジタルメディアと子どもの関わりが密になる中、今年25周年を迎えたこどもちゃれんじも、時代の流れとともに進化しているとのこと。デジタルを取り入れながら、親子の直接的なコミュニケーションを重要視し、多様な視点を育んでいくというテーマに今後は重きを置いていくという。小学校でも情報リテラシーの授業が当たり前になっている今、幼児期のデジタルメディア教育は今後さらに重要となっていくことが予想される。
【関連リンク】
こどもちゃれんじ 25周年 子育てシンポジウム記念講演
http://kodomo.benesse.ne.jp/cp/25/symposium/