窪田が「ピュアな心」と評した石田はルックスもそういうイメージだし、吃音の芝居などもひたむきにこなしている。ヒロイン役の清水もキラキラとした美少女だ。ともに天使感のある両者を軸とした序盤は、爽やかな希望にあふれている。
気になるのは、第3週以降だが、窪田も二階堂も実績のある役者だ。初回に見せたコスプレやダンスのような、コミカルな軽妙さでも楽しませてくれるだろう。また、そのうち、志村けんも登場する。コロナ渦に倒れた名コメディアンの姿は、哀しみだけでなく、元気ももたらしてくれるのではないか。
さらに、古関が作った応援歌や昭和歌謡の数々も流れるし、主人公とヒロインが結婚して子供が生まれれば、それをまた、魅力的な子役が演じることだろう。
コロナ渦のなかの船出という数奇な運命を背負った「エール」。しかし、それを予知したわけでもないのに子役祭りというかたちで幸先のいいスタートが切れたのは、このドラマが「持ってる」ということでもある。かつての日本人を癒やし、元気づけた古関メロディーのように、半年にわたってそういう存在となるよう、こちらからもエールを送りたい。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など