ロシアは新型コロナウイルスの感染者が急増しており、5月14日時点で25万人を超えた。累計では、米国に次いで世界で2番目に多い。ミシュスチン首相やファリコフ科学高等教育相ら政府高官の感染も明らかになっている。
一方、死者数は14日現在で2305人。感染者数がほぼ同規模の英国やイタリアで死者が3万人を超えていることを考えれば、非常に少ないといえる。致死率はわずか0・9%で、世界でも最も低い部類だ。
ただ、感染拡大によりロシアでは重要イベントが見送られることになった。5月9日、旧ソ連の対ドイツ戦勝75周年の式典では、モスクワの赤の広場で毎年行われる軍事パレードなどのイベントが延期された。ロシアの現況について、駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏に話を聞いた。
ガルージン氏は、新型コロナによる死者数が欧米諸国と比べて低く抑えられていることについて、早期治療と大規模な検査体制を理由に挙げた。
「ロシアの特徴は、無症状の患者の比率が非常に多いことです。約25万人の感染者の46・5%を占めています。死亡率も世界水準の7.4分の1という統計があります。これは医療体制が効果的に機能していることを示しています。例えば新型コロナ感染患者の専用病床は、3月は2万9千床でしたが、現在は13万床まで拡大しています。PCR検査数も3月は1日に2500件しかできませんでしたが、いまは17万件までできるようになりました。さらに検査キットを大量に生産し、5月中には1日30万件の検査が可能になる予定です」
感染者は依然として増えているが、感染拡大のスピードは落ちてきている。プーチン大統領は、5月12日から外出や企業活動の制限を段階的に緩和。モスクワでは製造業や建設業が再開した。通勤で地下鉄など交通機関を利用する場合は、マスクと手袋の着用を義務付けている。
5月7日、安倍晋三首相はプーチン大統領と電話で協議し、新型コロナの感染拡大防止に向けて連携することを確認した。4月24日には、梶山弘志経済産業相がレシェトニコフ経済発展相とテレビ会談を行っている。