安倍首相は2016年5月の日ロ首脳会談で、エネルギー開発や極東地域の産業振興、健康寿命の延長など「8項目の経済協力」を提案している。

 ガルージン氏は、この「8項目の経済協力」の枠を使い、新型コロナの感染拡大防止に向けて日ロ間が協力することが不可欠だと指摘する。

「8項目の中には、医療・健康分野が明記されており、日ロ間の協力は十分可能です。具体的には、ロシアのタタールスタン共和国にある日ロ合弁企業は、新しい迅速検査キットを製造・販売しています。このプロジェクトに融資しているのは、日本のJBIC(国際協力銀行)とロシアの直接投資基金です。いま最も求められているものが、日ロの協力の下で実施されているのです」

 日本の新型コロナ対策についてはこう言及した。

「私は日本政府と国民が感染拡大防止のために献身的に協力しているのを見て、感銘を受けております。同じように、日本のお医者さんは患者のみなさんを治療するため、献身的に頑張っておられることを本当に高く評価したいと思っております」

 ロシアは大量の検査を行っている。だが、日本は諸外国と比較しても検査数が桁違いに少なく、国内外から批判されている。そのことについて見解を求めると、

「私は専門家ではないからコメントする立場にはありません。各国が独特な状況に応じて対応を決めていると思います」

 と答えた。

 ロシアでは、対ドイツ戦勝75周年の式典で航空パレード以外の大規模イベントが延期を余儀なくされたほか、各都市で戦没者を追悼する「不滅の連帯」も今年は行われなかった。第2次世界大戦で、旧ソ連は戦闘員と民間人合わせて2700万人が犠牲になったとされている。

「『不滅の連帯』は必ず年内に挙行します。わが国の自由を守り、ヨーロッパをナチス・ドイツの占領から解放するために戦線に立った同胞を追悼します。戦争で犠牲になった親族の写真などを持って、大通りをデモ行進するのです。一つ指摘しておきたいのは、旧ソ連を構成した15の共和国がナチス・ドイツ撲滅のために戦いましたが、その中にはウクライナ共和国もありました。14年に武力によるクーデターが起きて、憲法に違反する形で政権交代が行われた。非常に残念なことに、現在のウクライナではナチス・ドイツに協力した人物を英雄として称賛する動きがあるのです」

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経済制裁を批判