研究の結果、青柳さんが導き出したのが「1日8千歩、そのうち中強度の歩行20分」という「黄金律」だ。少し息がはずみ、会話はできるが歌えない──、これが中強度の目安という。
「1日8千歩、20分の中強度で歩く生活を2カ月続けると『サーチュイン』と呼ばれる長寿遺伝子のスイッチが入ります。これが活性化すると生物の寿命が延びることが知られています」(青柳さん)
中之条研究で興味深いのは、「歩数/強度」と「病気の予防」にボーダーラインがあることだ。例えば、がんや動脈硬化の予防は「7千歩/15分」、高血圧症や糖尿病は「8千歩/20分」、メタボリックシンドロームの予防は「1万歩/30分」。歩数が多く強度が強ければよいというものではなく、歩きすぎは疲れがたまり、かえって健康を損なう可能性もあるという。
普段の歩行の中で中程度の活動を取り入れるには、(1)いつもより速度を上げて歩く(2)いつもより歩幅を10センチプラスして歩く、この2点を意識するだけでよいと青柳さんは言う。
「自然と背筋が伸び、胸を張り、腕を大きく振って歩くようになり、中程度の活動になります」
コロナ禍で脅かされる健康。だが、前出の久野さんは今こそ「ピンチをチャンスに変える時だ」と語る。
「私たちの調査では、成人の約7割が健康づくりに関心の低い無関心層でした。そのような人は健康情報を得ることをしないため、生活習慣病などの危機にすら気づいていませんでした。それがこの間の自粛生活により、健康無関心層も健康に関心を持ち情報を取りに行こうとしています。これは喜ぶべきこと。この期間でやめず健康への関心を持ち続け、健康で幸せな日々を手にいれましょう」
コロナ禍で改めて気づかされた健康の大切さ。街を歩くと、以前よりもウォーキングやジョギングをする人の姿を見かけるようになった。ウイルスと共生する「ウィズコロナ」の時代は、自分自身の健康に責任を持つ「自己管理」の時代でもある。(編集部・野村昌二)
※AERA 2020年6月15日号