毎日の通勤による運動効果は大きい。在宅勤務で同じ運動量を保つためには工夫が必要だ(撮影/今祥雄)
毎日の通勤による運動効果は大きい。在宅勤務で同じ運動量を保つためには工夫が必要だ(撮影/今祥雄)
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AERA 2020年6月15日号より
AERA 2020年6月15日号より

 テレワークで歩く機会が減っている。専門家は「異常な事態」だと警告するほど事態は深刻だ。運動不足によって生活習慣病などのリスクが懸念される。歩数は1日8千歩が目安とされるが、どうすれば達成できるのか。どれくらいの強度で歩くと効果的なのか。AERA 2020年6月15日号は、健康を維持できるウォーキング法を紹介する。

【グラフ】歩数と中強度の活動時間に病気予防のラインがある

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 テレワークで歩数3割減──。

 こんな調査結果が4月に出た。調査したのは、筑波大学大学院と健康機器メーカー「タニタ」。

 調査は、4月7日に緊急事態宣言が発令される以前の3月からテレワークを実施してきた会社員約100人(平均年齢48歳)の歩数を比較。すると、テレワーク実施前に1日平均約1万1500歩だった歩数は、実施後は平均3割減少した。なかには9151歩から2748歩と、7割も減少した人もいた。

 5月25日に全国で緊急事態宣言は解除され、徐々に日常を取り戻しつつあるが、テレワークを継続する企業は多い。この間、最も大きな変化は、「歩かなくなったこと」だろう。携帯電話向けコンテンツ配信の「ネオス」が運営する歩数計アプリ「RenoBody(リノボディ)」のユーザーを対象に行った調査でも、自粛要請や緊急事態宣言に伴い、平均歩数は目に見えて減っている。

 冒頭の調査を行った筑波大学大学院教授の久野譜也(くのしんや)さん(健康政策、スポーツ医学)は、この歩数の減り方は、病気やケガをして入院や寝たきりになった場合と同じ「異常な事態」として次のように指摘する。

「人によって異なりますが、3千歩歩くと100キロカロリー消費します。生活習慣病予防のために必要な運動量は1日に300キロカロリーといわれ、テレワークで3千歩減って100キロカロリー消費しなくなったと仮定すると、必要な運動量のうち3分の1を落としたことになります」

 久野さんが懸念するのが、運動不足によって生じる「二次健康被害」のリスクだ。運動量が減るため、食事の量が変わらなければ脂肪として蓄積されるので体重が増え、メタボや生活習慣病の発症リスクが高まる。さらに、糖尿病や高血圧といった基礎疾患の悪化につながる恐れもあるという。対策の要の一つが、「歩く」という身近で地味な行為だ。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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