だが、新型コロナ患者を受け入れていない病院や診療所も経営難に陥っている。患者の「受診控え」が深刻だからだ。多くの人が新型コロナ感染の可能性を恐れて、通院を控えるようになった。すでに勤務医の給与をカットした病院も出た。赤字を補填(ほてん)する手立てもない。

 緊急事態宣言が明け、第2波第3波を警戒しながらも、徐々に日常を取り戻しつつある。診療所の定義は19床以下とされ、歯科を除く国内の医療機関の約9割を占める。アフターコロナの世界を考えたとき、これまでは私たちにとって一番身近なこうした医療機関はどうなるのか。

 東京保険医協会の調査によると、都内の診療所1200カ所以上のうち、4月上旬の診療収入が減少した診療所は9割超という。収入が3割以上減少した診療所が7割超、5割以上の減少は3割に上る。調査には、「収入が悲惨な状態」「閉院の可能性も出てきました」など悲痛な医療機関側の声が寄せられた。

 病院経営に詳しいある税理士は言う。

「診療所の経営状況の平均からすると、例えば収入が2割減るだけで月額100万円以上あった利益が50万円ほどになります。子どもを医学部に入れることが多いことを勘案すると、食べていくのがやっとになります」

 自宅で開業しているなら耐えられるかもしれないが、特に仕事帰りに立ち寄るような都心のビル街にある診療所では、高い家賃が負担になる。今後もテレワークが続けば、患者も減ることが予想される。

「テナント料や導入した最新医療機器のリース料があれば、かなり厳しくなると考えられます」(税理士)

(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年6月15日号より抜粋