うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や5歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
この連載が本になりました。タイトルは『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』です。杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る「私の育児論」を、ぜひご覧ください。
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2008年、アメリカで出版されたビジネス書『Outliers』は、3カ月で100万部売れ、大ベストセラーとなりました。
Outlierとは、「標準から外れている人」という意味で、日本語版は『天才!成功する人々の法則』というタイトルに意訳されています。著者のマルコム・グラッドウェル氏は本の中で、ある分野において一流の成功者になるには、「1万時間の練習」と「好機(環境)」が大切だと述べています。
■息子の歌声を聞いて知った「音痴は遺伝ではなく環境によるもの」?
時間をかけて努力することは、どの分野でも成功を収めるための必要条件でしょう。そして環境の大切さも、深く納得するところがあります。
実は私、なかなかの音痴でして……私の母親も祖母も音痴なので、以前は、「音痴なのはもう遺伝なのかな」と諦めていました。しかし最近、「音痴は環境によるものではないか?」と思い始めたのです。
息子が幼稚園に通っている頃、園で習った歌を息子からよく聞かされたのですが、音程がきちんと合っていたのです。「えっ! わが家に代々伝わる音痴が遺伝していない!」と驚きました。
別に音痴でもいいのですが、親しくない人とはカラオケに行きづらいとか、音楽で歌のテストが悲惨なことになるとか、たまに厄介なことが起きるため、歌はうまいに越したことがありません。
ところがです。小学校に入学してから、あるとき、校歌を口ずさんでいる息子の声を聴いていたのですが……なんとなく、音程がずれている部分があるのです。このとき、「もしかして私が音痴なせいで、私の子守歌や鼻歌を聞き続けるという環境下にいた息子が音痴になってきているのではないか?」という仮説が浮かんできました。
歌がうまいかどうかに関しては、人種による骨格のせいだとか、遺伝によるものだとか、さまざまな説があります。そして実際のところ、環境的な要因は確実に影響してくるでしょう。
以前、中国人はみんな歌がうまいという話を聞きました。中国語は一つの単語(たとえば「イェン」)に対し、 語尾が上がる、語尾が下がる、下がってから上がる、ずっと同じ音程、という四つの発音の仕方があり、音の変化によって意味が変わってきます。
つまり、幼少期から言語習得のために音の高低を意識しなければならないため、音程をコントロールしやすいのでしょう(音痴な人がいないというわけではないようですが)。
また、外国人で歌がうまい人が多いのは、英語と日本語で喉の使い方が違うからだ、とも聞いたことがあります。