また、自己流のやり方は長年積み重ねてしまうと「癖」となり、そうそうかんたんに修正できなくなってしまう危険があるため、できるだけ早いうちに「質の高いやり方」を学んだほうが得策でしょう。

 しかも厄介なことに、人間は、無意識のうちに自分の考え方と同じ情報ばかりに耳を傾け、自分と異なる意見にはあまり目を向けず排除しやすいという性質をもっています。

 よく、子どもの発想は柔軟で、お年寄りは頭が固いといわれますが、それは当然なことなのです。年が多くなればなるほど、自分と似ている意見を見つけては脳に刷り込む回数が増え、価値観を強固なものにしていくのです。そうして長年かけて作り上げてきたものを簡単に「捨てろ」といわれても、なかなか難しいでしょう。ある程度、年齢がいってから物事の上達を目指すには、頭を柔らかくして「過去の自分のやり方」を手放す勇気が必要になってきます。 

 子どもは、経験が浅いため、余計な癖がついていない点が、大きなメリットとなります。ですから、何かしらがんばらせたいことがあったら、 正しいやり方を最初に身につけさせるべきです。お箸の持ち方も、字の書き方も、結局は「癖」なので、小さい頃のほうが修正しやすいでしょう。

 息子は、音痴でもありますが、加えて運動音痴でもあります。そこで今、隣の駅のビルにある「アローズ」というジムが気になっています。科学でトレーニングプログラムを決めるらしく、骨密度で成長度合いを測り、眼球運動や動体視力などを検査し、力、速度、持久力などを分析して、その子が運動能力をアップするために最適なプログラムを組んでくれるそうです。

 運動は教えるのが難しいので、ここで、何が得意で何が苦手なのか、苦手なところを克服するにはどう練習をすべきか教えてもらいたいな、と思っています。

 歌のほうの音痴に関しては、知人が、漢詩に節をつけて歌う「詩吟」を習ったら、喉の使い方がうまくなって歌が上達するとアドバイスをくれました。ただ、6歳の息子が詩吟に通って歌う姿を想像すると、シュールすぎるので……応急処置として、歌がうまいアーティストの曲をいつでも聴けるような環境を作っておこうかなと思っています。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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