工藤さんは、この夏の休みにケアマネ、ヘルパー、親の友人などとさらなる信頼関係を構築し、連携する態勢を整えることができれば、「安心が倍増」するはずと強調する。
コロナ禍で会社がリモートワークが可能なら週末の2、3日だけでなく、1週間という少し長い期間一緒に過ごすといろんな課題が見つかるとも話す。
「例えば月曜はデイサービス、水曜は地域の集まり、土曜は燃えないゴミの日など生活のパターンがあり、親は何ができていないかを知ることができますから」
なんにせよ、無理を重ねては介護する側ももたない。太田さんはこう語る。
「遠距離介護をする際に、仕方ない、といい意味で割り切ることも大切です。心配はしても、どうにも動けないときは動けない。パオッコのサロンの中でもそう考えて、心が軽くなった人は多くいます」
最後に、東京・多摩地区を拠点に活動する河北医療財団の理事長相談役で、認知症サポート医の天本宏さんに、コロナ禍での遠距離介護にどう向き合えばいいか聞いた。
天本さんもかつて広島で暮らす母の遠距離介護をした経験がある。
「新型コロナの拡大に目を奪われがちですが、コロナ以外のリスクがあることを意識しなければならないのです。心身が衰えるフレイルと、QOL(生活の質)を意識することです」
というのも、新型コロナを恐れ、自宅にこもりっきりになると、筋肉、脳などの機能が確実に低下する。それをまず防ぐ必要がある、と指摘する。
「このコロナ禍を機会に、もし親が感染したらどうするか、今後どう生きたいか、について話し合っておくといいでしょうね」
子どもは遠くの親を管理しようとする傾向があるが、親の意思を尊重すべきだ、と天本さんは強調する。
「コロナ禍を単なるマイナスと捉えずに、親子のコミュニケーションを深めるきっかけにつなげてほしいですね」
災い転じて介護に益する。そんなしなやかな心構えで、記者も今後に備えたい。遠距離介護も、ウィズコロナなのである。
(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2020年7月10日号より抜粋