
小さな子どもを抱えるママにとって、車移動は大きな助けになる。ベビーカーなどの重い荷物も運べるし、子どもに泣かれても車内なら他人に迷惑がかからない。しかし、出産後に運転免許を取ろうとなると、想像以上に高いハードルがあるようだ。自動車教習所で大変な思いをしたというママライターが実体験をつづった。
【写真】トラックの大型自動車免許を持っている意外な有名女優はこの人
* * *
妊娠5カ月目に入ったある日のこと。自動車の運転免許を持っていなかった私に夫はこう言った。
「出産が終わったら、免許取りにいかなくちゃね」
私もそう感じていたので、ごく軽い気持ちでこう答えた。
「そうだね。ここは車がないとちょっと不便だもんね」
ただ、後にあの“地獄ような日々”が待っているとは想像だにしていなかった……。
私は妊娠を機に、東京の都心部から夫婦で郊外へ引っ越した。私たちの住まいは最寄り駅から車で20分ほど、徒歩だと1時間ほどかかってしまう距離にある。大通りまで行けばバス停はあるが、30分近く歩かなくてはいけない。
何かと不便な場所ではあるが、緑の多い環境での育児は、子どもの情操教育にも良いだろうと前向きな気持ちだった。赤ちゃんのことを第一に考え、妊娠中は遠出せず、妊婦検診と自宅の周辺を散歩するだけ。日々の食材などは、週末に夫の車に乗って買いに行った。快く車を出してくれた夫にはすごく感謝していた。
そうした中で冒頭のような会話があったわけだが、本当に車の必要性を痛感したのは出産後だった。毎月のように乳児検診や予防接種があるため、頻繁に外出せざるを得なくなった。乳児を抱えて自転車に乗るのは法律で禁止されているため、徒歩しか手段がない。雨の日は絶望的な気分になった。
特に辛かったのは、赤ちゃんを抱えてバスに乗ること。乗車前から身構えて、車内では素早くベビーカーを畳み、抱っこひもに抱き替える。この一連の動作はどうしても時間がかかってしまうので、他の乗客の視線が気になって仕方がない。乗車するたびに「頼むから車内で泣かないで……」と祈るような気持ちだった。