これは案外、難しい。人は何かにつけて「相性」より自分の「好き嫌い」を優先しがちだからだ。もともと「好き嫌い」の感覚が希薄なのかもしれないが、自分でも意識的に抑制しているわけで、彼女は自分の「好き」以上に仕事相手の「満足」を重視している。この姿勢がこなせる役の幅広さにもつながるのだろう。
二度の出産を経て本格復帰したあとも「家政婦のミタ」(日本テレビ系・11年)が大ヒット。昨年度前期の朝ドラ「なつぞら」ではヒロインの母親という重要な役を演じた。100作記念ということで、数多くの朝ドラ女優が里帰り出演をしたなかでも、最高のポジションである。
やや不発に終わった朝ドラ「ひまわり」から24年。まさに究極の巻き返し劇だった。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など