ヤクルト入団会見の際に、その田中から「はるかに僕なんかよりいい」とエールを贈られたことを知ると、「すごくうれしかったですけど、全然そんなことないです」と謙遜し、「スタイルは参考にしています。総合力で勝負したい」と、外見だけではなく、実績面も目標にしていることを強調した。

 2軍スタートの今季は、7月20日のイースタン、楽天戦で、前出の高田との先発対決も実現した。

 甲子園準優勝投手といえば、18年に“金農旋風”を巻き起こした吉田輝星(金足農-日本ハム)も、楽天のエース・則本昂大に憧れ、YouTubeで投球フォームをチェックするのが日課だったという。

 昨年1月の新人合同自主トレでも、侍ジャパンの建山義紀投手コーチが「球の押し込み方は、則本のよう」と評し、則本本人も背格好(高校時代の吉田は176センチ、81キロ、則本は178センチ、82キロ)や直球の伸びなどの共通点から、「自分に似た投球をするなあ」と認めるほどだった。

「ありがたいけど、僕なんか目標にしてはダメ。もっと上に行ける選手です」と則本が吉田にエールを贈ったように、彼らが「もっと上に行く」ためには、“そっくりさん”を卒業し、高校球児たちにフォームを真似られるような存在になれるかどうかにかかっている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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