「自分は彼女ができないとは思っていなかった」
派遣切りへの憤怒も消えていたと主張する。クビ切りを宣告されたときは疑問に思い、クビ切りを撤回されると〈派遣は使い捨てのパーツだ〉と掲示板で憤ったが、別の掲示板「2ちゃんねる」で〈正社員でも派遣でも組織に属するというのはそういうもの〉との書き込みを見て「なるほど」と得心したのだという。
大きな事件を想像したものの、それは起こさない前提での「イメージ」に過ぎない。刃物の購入もレンタカーの借用もただの「アピール」で、誰にも何にも止められないから「起こさざるを得なかった」。これが事件から2年かけて作られてきた「ストーリー」だ。
加藤被告は法廷で「覚えていません」「よく分かりません」を連発し、さらに窮すると「合理的な説明ができません」と言いだす。まるで被害者のような自身の物語にそぐわない思い出は、記憶から抹消されてしまったかのように映る。
検察側が明かした事件後の調書によれば、犯行前日と前々日に続けて風俗店に行き、性的サービスを施された。その理由について、
「誰かに(犯行を)相談したかったのかもしれませんが、記憶にありません」
と述べていたという。
人間の行動は必ずしも「合理的」ではない。それを理解しない限り、加藤被告がありのままの「真相」を語ることは期待できそうにない。