最近では年代を問わず悩まされる人が多い腰痛。その一因として、労働者健康福祉機構の整形外科医の松平浩(こう)さんはストレスを挙げる。
松平さんはこれまでに、働く世代を中心に腰痛に関連する研究を続けてきた。アンケート調査などをもとに分析した結果、腰痛は心理社会的要因で引き起こされる場合もあることがわかったという。
例えば、強いストレスにさらされると、心のバランスを保つ脳内物質であるセロトニンやドーパミンが出づらくなる。その結果、心臓がドキドキしたり下痢をしたりと自律神経の影響を受ける症状が出る場合がある。松平さんは、これと同じ仕組みで腰痛や肩こりが起こることも考えられるという。
腰痛の原因はストレスのほかにも、それと並列して腰自体に負担がかかる機能障害が考えられるという。松平さんは約3800人のデータをもとに解析した結果、(1)介護を含む重量物(20キロ以上)の取り扱いに従事したり、(2)前屈やねじり動作を頻繁に行うことに加えて、(3)仕事に対する満足度が低かったり、(4)上司のサポート不足や、(5)めまいや頭痛、肩こり、胃腸の不調などがあることが、腰痛が慢性化する危険因子であることがわかった。
松平さんは、猫背の姿勢が強くなった場合は体を後ろに反らし、後ろに反り気味の時間が増えたら前かがみになる軽い運動を推奨している。くしゃみや咳をする際も壁や机に片手をついて腰への衝撃を和らげることが必要だ。
そして、脳の機能障害を防ぐ必要がある。ドーパミンなどの分泌を促し、仕事に集中するため「よし、やるぞ」と一声かける。また、脳の機能を活性化させるには、音楽鑑賞やウォーキングなどがお勧めだそうだ。仕事中は挨拶や感謝の言葉をあえて口に出してみるなど、折り目をつけた人間関係を意識的につくることも大事だという。さらに松平さんが提唱するのは日記をつけることだ。
「上司に怒られたら腰が痛くなった」など、その日の出来事やその際の体調をつけておくと、後になってどういうときにストレスと連動して体調が悪くなるかがわかり、解決策も見つけやすいという。
※AERA 2013年1月21日号