コロナの影響から、かつてないスピードで貧困が拡大し、住まいを失う人が増えている。国の支援制度は課題が多い。対策は、待ったなしだ。AERA 2020年10月19日号で掲載された記事を紹介。
【コロナ禍で急増 「住居確保給付金」の4月以降の支給決定件数はこちら】
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賃貸住宅に住んでいる人たちも、事態は深刻だ。
「このままではアパートを出ていかなければならなくて、ホームレスになるかもしれません」
都内の女性(30代)は不安を口にする。
派遣社員として働いていたが、5月いっぱいで契約を更新されず「雇い止め」となった。次の仕事は紹介されず、月7万円の家賃が払えなくなった。
家賃が払えなくなった人を支援する公的制度として、「住居確保給付金」がある。2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づく制度で、支給額は東京23区の場合、単身世帯で毎月5万3700円、2人世帯で6万4千円を上限に給付が受けられる。支給期間は原則3カ月、最長で9カ月。厚生労働省によれば、今年4月から7月までの支給決定件数は約8万5千件。これは、すでに昨年度1年分(3972件)の約22倍で、仕事や住まいを失う人が相次いだリーマン・ショック後の10年度1年間の2倍以上に達した。
先の女性も7月から住居確保給付金の支給を受け、何とか家賃を滞納しないで済んでいるが、支給期間は最長で9カ月なので、このままでは来年3月で支給は打ち切られる。
■SOSに「非正規」多数
新しい仕事を見つけ生活を立て直したいと思い、ハローワークに登録するなど就職活動をしているが、思うように仕事は見つからない。頼れる人はおらず、経済の悪化が予測される今、最悪の事態が頭をよぎるという。
「家をなくすのが一番怖い」
生活困窮者の支援にあたる「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さんは、今コロナ禍によりかつてないスピードで貧困が拡大し、住まいを失う人が増えていると指摘する。
「若くて非正規の方が多いのが特徴です」
稲葉さんによると、4月に同ファンドのホームページにメール相談フォームを立ち上げると、5月までの2カ月間に約170件の「SOS」のメールが届いた。20代から40代まで、飲食・宿泊業などで働いている非正規労働者が圧倒的に多く、女性も2割近くいた。
相談は6月から7月中旬にかけ比較的落ち着いたが、「第2波」が来たといわれた7月下旬から再び増え始めたという。
「日払いや週払いで非正規の仕事をしていた方で、人員整理によって仕事をなくし、路上生活になる一歩手前、ネットカフェやカプセルホテルなどを転々としている方が多くいます」