1 完成在庫を狙う

 これはいつの時代でも通用するセオリーである。ほとんどのマンションデベロッパーは、販売中の物件が完成在庫になることを嫌うので、その前に売り切ろうとする。

 たとえば、ある金融系のデベロッパーは建物が完成する3~4か月前から値引きを始めることが多いようだ。そして、建物が竣工して数カ月も経過すると、値引き幅が大幅に拡大する。時には販売価格の1割を超える場合もあり、リーマンショック後には2割超というケースもあった。

 他のデベロッパーも、基本は似たようなものだ。

 ただ、住友不動産だけは物件が完成してから1年程度経過しないと値引きをしない傾向があった。しかし、コロナ後はその方針に変化があるかもしれない。

 なぜなら、コロナ前ですでに完成在庫になっている物件は、より売り急ごうと焦るからだ。

 局地バブルで底上げされていた土地の価格はこれから徐々に下がっていく。コロナ後に土地を仕入れた物件は、コロナ前よりも安く販売できる。そうした「コロナ後物件」が市場に出回れば、コロナ前に完成在庫となった物件は取り残される。デベロッパーが「値引きしても完成在庫を処分すべし」と判断した物件なら、1割以上の値引きを引き出せる可能性があるだろう。

2 値引き交渉は具体額を提示

 不動産業者は、契約をしない客の相手をいくらしても成績にならない。だから、買うかどうか分からない客が「値引きをしてくれるのなら考えてもいい」と言い出しても、まず相手にしない。だから「このマンションを買いたい」という明解な意思を示してから交渉するべきだ。

 そこに細かなテクニックはいらない。「○○○○万円だったら買います」と明解に数字を示すべきだ。担当者にしてみれば、ハッキリとゴールを示してくれる客の方がやりやすいし、好感も抱く。ただし、かけ離れた数字を示されると、ウンザリされる場合もあるので、ある程度の相場を頭に入れておく必要がある。

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売り主側の「焦り度」も重要に