X氏やZ氏の証言にあるような委託費の流用を巡る不正は、実際どれだけ行われているのか。筆者は都がホームページで公表する直近3年間(17~19年度)の監査結果の中から「不適正な支出がある」などの文書指摘があった28件について情報公開請求を行い、詳細な資料を入手した。
その内容は驚くべきものだった。今時、会社員でも許されない忘年会の下見のための飲食費用などはまだかわいいもので、元本保証のない有価証券の購入、1千万円もの債券の購入、法人クレジットカードによる年間500万円以上の私的流用、勤務実態のない者の給与計上など、コンサルタントの証言と符合するような“不正”の記録が数多く見つかった。
資料にある日ノ出町保育園(東京都足立区)は社会福祉法人南流山福祉会(本部・千葉県流山市)が運営する園。行政が不適正な支出などを是正するよう2度勧告したが改善しないため、20年8月、千葉県が県内初の法人名の公表に踏み切った。
同法人は足立区内にもう1園、流山市に1園を運営。法人全体で16年度だけでも役員報酬、使途不明金、個人的な経費に5千万円もの不適正な支出が見つかった。流山市の保育園では未払い賃金が5341万円に上り、17年に園長と副園長(当時)により訴訟も起こされている。
足立区も4年前に調査を行っており、「手土産代」「飲食代」「福利厚生費」「交際費」「来賓車代」など不適正な支出は13~14年度で約443万円に上った。足立区内の別の系列園でも給与遅配が起きた。
これらの経緯について法人本部に取材を申し込んだが、電話を受けた園長は「理事長以外では答えられず、理事長と連絡がつかない」。理事長の自宅に質問状を送ったが、返事は来なかった。(小林美希)
※週刊朝日 2020年11月20日号より抜粋