「その園ではコロナ禍の中、多くの保育士が不当に給与をカットされ辞めていきました。結果、人手不足になって、社長は私のところに『何とかして』と泣きついてきた。社長は園長たちには経営難だとウソを言いながら、会社の利益はこれまでどおり確保し、ぜいたくな暮らしをしています。保育園の運営費の原資が税金だという意識なんて、これっぽっちもない」
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経営コンサルタントとして100社以上の保育園の新規開設を手掛けてきたX氏は、自身の顧客である東京近郊の保育園についてこう吐き捨てた。
コロナ禍の中、保育士の「搾取」が止まらない。国は保育園が休園になっても保育士の収入が減らないように、人件費を含む運営費を通常どおり給付する特例措置をとった。だが、本誌が9月18日号で報じたように、一部の保育園がこれを悪用。運営費が満額支給されているにもかかわらず、休業した保育士の賃金をカットし、差額で利益を得ようとする園が続出したのだ。X氏の顧客の園も、こうしたうちの一つだ。
「業界の“ブラック経営”体質はコロナ禍で露呈しただけで、以前から蔓延している。保育園をつくりたいと相談に来る人の9割が金儲けのことしか考えていない」(X氏)
業界の闇に関わってきたX氏だが、保育士や親による子どもへの虐待のニュースが目立つ中、「保育園は子どもを守る砦のはず。現場を大事にしないブラック経営者は排除されるべきだ」との思いから実情を語った。
2019年度の内閣府の調査によると保育士の平均年収は362万円。日本人の給与所得者の平均である436万円(19年、国税庁)と比べても厳しい境遇に置かれている。ところがX氏によると、保育園を経営する社長の年収は1千万円以上が当たり前。なかには年収2400万円という経営者もいたという。
X氏によれば、保育園経営に味をしめた経営者が陥るパターンはこうだ。
「まずスーツやネクタイ、腕時計、バッグなど身の回りのものが、あからさまに高級志向に変わっていく。都心の高級マンションを社宅扱いにして住み、会社名義でリースした高級外車を乗り回してゴルフ三昧。やがて保育士や園長が愛人になる。高級レストランで食事し、家での食事はデパ地下で総菜を購入。愛人とのデート代や家族との海外旅行も会議や視察ということにして経費で落とすため、経営者家族の生活費はゼロに等しい」