2018年にはギャンブル等依存症対策基本法が全国で、20年にはネット・ゲーム依存症対策条例が香川県で施行されるなど、依存症への関心は年々高まりを見せている。
だが、近年は「早すぎる相談」も増えている。小林さんは言う。
「何でもかんでも依存症に引き付けて、『自分の子どもは依存症じゃないか』と不安になった方が来院するケースを見かけるようになりました」
■回復力は誰にでもある
啓発が進み、これまでは受診しなかった軽度の依存症患者や家族が病院に来るようになった。早い段階で適切な情報提供ができ、支援機関につなぐ第一歩を踏み出しやすいなどのメリットはあるが、悩みも出てきている。
「ゲームばかりしているからといって、すべての人がゲーム依存症というわけではありません。ただゲームを取り上げたり、入院すればすぐに改善するものでもないんです」
依存症の治療には、裏側にある孤独感や社会への不信感を取り除くことが不可欠で、家族や教員など周囲の人間が向き合うことも欠かせない。では、家族や自分が依存症かもしれないと不安になったとき、最初にとるべき行動は何か。国立精神・神経医療研究センターで薬物依存研究部長を務める松本俊彦さんは、地域の精神保健福祉センターを活用してほしいと訴える。
「都道府県や政令指定都市に少なくとも1カ所は設置されていて、家族や恋人からの相談も受け付けています。受診を勧めるタイミングや本人をその気にさせる方法、支える人が何に気を付ければいいのかといったことを教えてくれます」
また、神奈川県立精神医療センター依存症診療科医師の青山久美さんは、周囲でサポートする人の存在も大きいと話す。
「逆境体験があったとしても、誰しもが回復力を持っています。自分の体験を受け入れてくれて、信頼できる人の存在は大事だなと思います。『依存症だからやめなさい』ではなく、『一緒に考えよう』という関わり方ができれば、心の健康度が上がる。それが依存症的な行動を減らす第一歩にもなります」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2023年2月6日号より抜粋