そして、マスク着用が長引くことによって感じるのは、人と人のコミュニケーションが阻害されるということです。
「目は口ほどに物を言う」という言葉がありますが、やはり口の存在も大事ですね。マスクをしていた方が“脳内補完”で女性の顔が美人に見えたりしますが、私にとっての女性の魅力は口元の表情があってこそです。マスク越しの会話では、心が通じ合えません。
子どもたちが学校で一日中マスクをしていると聞くと心配になります。子どもは友だちと素顔で笑い合うことが、とても大事だと思うのです。
マスクは新型コロナに対する不安の象徴であるように思います。不安がるだけでなく、どの局面でマスクが必要なのか、もっと冷静に議論すべきではないでしょうか。感染はさらに長期化する恐れもあります。だからこそ、時に応じて人々がマスクをはずしていく方策が、必要だと思うのです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2020年12月11日号