実際「紅白」には意味不明の趣向も多い。ただ、そこが他の番組にはない面白さでもある。アイドルが演歌の後ろで踊ったり、けん玉のギネス記録に挑戦したりするのはもとより、過剰な演出によるハプニングの数々。おかげで花吹雪の紙が鼻の穴に入る人もいれば(北島三郎・81年)大量に降らせた星型の飾りのひとつが頭の上にうまく乗っかる人もいる(YUKI・12年)わけだ。
コロナ禍のなか、無観客で行われる今年は、どんな「紅白」らしい名・珍場面に出会えるだろうか。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など