「いつの頃からか、手術をする患者さんが私の分身に感じられるようになった。目の前にあるのは私のからだなのです。そうなると手術が楽しくて仕方がない。そのうち、手術と関係ない道で行き交う人も、私のからだだと思えるようになってきました。人に会うのが楽しくて仕方がない」

 私はとっさに思いました。「あぁ、辛先生は共通の『いのち』が見えるようになられたのだ」

「いのち」は自分の「からだ」「こころ」と共にあるだけではありません。もっと広がりがあるものなのです。自分の身の回りの世界、自然界、地球全体、虚空にまで「いのち」は広がります。この「いのち」の広がりがスピリチュアリティーにとって重要です。私は自分と共にある「いのち」を「ソウル(soul)」、外に広がる「いのち」を「スピリット(spirit)」と呼んでいます。

 辛先生は私より15歳年上です。15年たてば、私にも共通の「いのち」が見えるかと思ったのですが、30年が過ぎた今もまだ見えません。でも、あせらず待っています。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2021年2月12日号

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