一方、私立大学では、事情がかなり違ってくる。オーナー系つまり創設者の親族が学長を務めている大学では、2代目3代目で10年選手、20年選手の学長がいる。オーナー系学長の長期政権であっても、大学運営がしっかりなされているところはいくつかある。が、独裁色が強すぎてまわりの意見を聞かずに新しい学部づくりに失敗し、定員割れで苦労する大学もある。
「大学ランキング2021」(朝日新聞出版)では、学長の在任期間、学長の最年少と最高齢、学長の出身大学ランキングを掲載している(2020年1月現在。カッコ内は就任期間)
在任期間の長さでは次の学長が紹介されている。
大阪学院大・白井善康(43年)
名古屋商科大・栗本宏(39年)
武蔵野音楽大・福井直敬(39年)
しかし、3学長はいずれも2020年内に新しい学長と交代し、親族が後継者となった。
現在、在任期間が長い学長は次のとおり。(2021年1月現在。カッコ内は在任期間)
至学館大・谷岡郁子(35年)
北海商科大・森本正夫(30年)
東邦音楽大・三室戸東光(28年)
玉川大・小原芳明(27年)
岡山商科大・井尻昭夫(26年)
次に学長の年齢を見てみよう。キャリアを積んだ50代、60代を想像しがちだが、40代も活躍する。たとえば以下の学長だ。
松山大・新井英夫
函館大・野又淳司
大阪経済大・山本俊一郎
帝京大・冲永佳史
名古屋産業大・高木弘恵
名古屋女子大・越原もゆる
若い学長のなかには、創設者の親族も多い。
一方、学長の最高齢は、横浜薬科大の江崎玲於奈である。1925年生まれでまもなく96歳になる。大正、昭和、平成、令和を生き抜いたノーベル賞学者だ。
最後に学長の出身校を見てみよう。
東京大、京都大がかなりの数を占めるが、10年前に比べると出身校にバラツキが見られるようになった。
東京大出身 2009年 127人、2019年 79人
京都大出身 2009年 70人、2019年 45人
大学間の人材交流が進んだ結果ともいえる。学問を発展させる、最先端研究を進めるにあたって、アカデミズムの世界をタコツボ化させないためには、良いことである。
地域ブロック別に見ると、かつては、たとえば北海道地方の大学は北海道大出身、東北地方の大学は東北大出身の学長が多かった。が、これも多様化が見られる。
前出・旭川医科大の吉田晃敏は、同大学が1973年に開学して以来7代目の学長になるが、それまでの6人中5人は北海道大医学部出身であり、「北大の植民地」と揶揄されることもあった。
吉田学長は旭川医科大出身である。同大学では初めて母校出身者が大学トップとなり14年が経った。リーダーシップを発揮しすぎ、周囲と軋轢が生まれたようにも思える。
コロナ禍という緊急事態において、医学部、大学付属病院の役割は大きい。学内でもめることより、コロナ禍で不安を抱く地域住民に目を向けてほしい。
(文中敬称略、文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)
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