新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、医師、看護師、保健師ら医療従事者は、日夜過酷な勤務状況で献身的な仕事をされている。私たちはいつもたいへんな敬意を払っている。
こうしたなか、残念なできごとが起こった。
日本で最北端の医学部、国立の旭川医科大の吉田晃敏学長が、付属の旭川医科大学病院の古川博之院長を解任したのである。学内の会議の内容を外部に漏らした、また新型コロナウイルス感染症患者の受け入れをめぐる吉田学長とのやり取りを恣意的に報道機関に話した―――というのが解任理由だった。
これに対して、古川博之前院長は、情報漏洩はなかった、学長の「患者を受け入れるなら辞めてください」という発言はパワハラにあたる、と反論している。
コロナ禍という緊急事態において、こうした問題は速やかに解決し、緊急事態に対応してほしい。
今回の問題で注目されたのが、旭川医科大学長の強い権限と、長い任期だ。
吉田学長は同大学の1期生(1979年卒)。2007年に学長となった。その後14年にわたって大学トップの座にある。現在、国立大学のなかで、学長在任期間はもっとも長い。
国立大学長は2期6年務めるのが一般的である。多くの大学で学長の任期に上限を設けているからだ。ところが、昨今、任期を撤廃する大学が増えている。旭川医科大、筑波大、東京芸術大、東京工業大、大分大などである。
2020年、筑波大では永田恭介学長の再任が決まった。2021年4月から2024年3月まで学長を務めることになり、任期をまっとうすれば11年間の長期政権となる。同大学には学長の再任回数の上限がなく、定年制もないため、永田学長はそれ以降も引き続き筑波大トップであり続けることができる。
国立大学の学長任期のあり方についてはさまざまな意見がある。
任期撤廃の根拠は「大学改革で長期計画を進めるため、学長は長くリーダーシップを発揮し大学運営を安定させるべきだ」といったものなど。その逆に任期を定める理由は「長期になるほどまわりの意見に耳を傾けず独裁的になり、大学運営を誤ってしまう」などである。
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