金正恩(キムジョンウン)第1書記が「金王朝3代目首領」となって1年。年長の側近らにかしずかれ、「自信過剰に陥っているのではないか。その方が心配だ」(専門家)と指摘されるほど、北の米国・韓国・日本などに対する挑発は度を越している。
中距離弾道ミサイル「ムスダン」を据え、「後は発射ボタンを押すだけだ」と恫喝し、日本には「東京、大阪、横浜、名古屋、京都には人口の3分の1以上が住む。一撃で消滅する可能性がある」と吠えている。
こうした挑発行為が続くなか、気になるのは、実は北は、ミサイル発射や核実験による莫大な出費と制裁による兵器ビジネスの収入減で、過大な軍事費負担に耐えられないほど懐が枯渇しつつあるのではないかということだ。
油も不足し、通常兵器も旧式。食糧は備蓄分を取り崩す。軍民が動員された軍事訓練は3月末に解除され、軍人も一般人も4月初めから農業支援に動員された。「第1次核危機」の1993年春には予備役を軍に復帰させ戦時体制を敷いたが、国力は当時より遥かに落ち込んだ。
異様なまでの挑発的言動は、「このままでは生きていけない、対北政策を転換してくれと訴える絶叫」(韓国・李明博(イミョンバク)前政権当時の大統領府高官の発言)ともとれる。米国には核保有国の地位と「金王朝」の体制存続を保証させ、韓国には前政権の5年間途切れていた左派政権時代の大規模食糧・インフラ支援再開、日本には「かつての植民地化の賠償」として巨額経済支援に応じさせる──。
韓国の中小企業が約5万4千人の北朝鮮労働者を雇用する「開城(ケソン)工業団地」。北は4月初めに事実上韓国側を追い出し、工場の操業を暫定中断させた。韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は「これではもう北に投資する企業はなくなる」と批判した。だが北は経済的実害を被っても、「さらに大きな果実」を得ようというのか、執拗な脅迫を続ける。
※AERA 2013年4月22日号