西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「入試にマスクはいらない」。
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【飛沫防止】ポイント
(1)呼吸を抑制するマスクの存在は「必要悪」
(2)マスク着用の必要性が拡大解釈されるようになった
(3)入試では咳エチケットだけを徹底すればいい
大学入学共通テストの受験生が鼻を出したままマスクをしていて、監督者とトラブルになりました。この欄で「鼻出しマスクの勧め」(2020年9月18日号)を書いている私としては、気になる話です。
このトラブルを聞いて、私はそもそも、入試の会場でなぜマスクが必要なのだろうかと疑問を持ちました。これまで何度か書きましたが、呼吸を抑制するマスクの存在は「必要悪」です。マスクの必要がないときには、マスクを外したほうが体にとってはいいのです。
入試でのマスク着用の義務付けは、文部科学省が出した「令和3年度大学入学者選抜に係る新型コロナウイルス感染症に対応した試験実施のガイドライン」に基づくものです。このガイドラインには、マスクのほかに「座席の配置は、なるべく1メートル程度の間隔を確保すること」といったことが書かれています。座席の間隔を空けることはフィジカル・ディスタンシングの見地からわかります。しかし、そのうえでなぜマスク着用が必要なのでしょうか。
それはマスク着用の必要性が拡大解釈されるようになった結果だと、私は思っています。
そもそも、マスクは咳(せき)エチケットのひとつの方法だったはずです。咳やくしゃみでウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)が出る。だから咳などをするときには、マスクで口や鼻をふさごうというわけです。この咳エチケットはマスクでなくても行えます。ハンカチで口や鼻をふさいでもいいし、とっさの時は腕(袖)を口の前に持ってくる方法もあります。