渋谷教育学園幕張 (撮影/松岡瑛理)
渋谷教育学園幕張 (撮影/松岡瑛理)
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過去40年の東大合格者数と順位 (週刊朝日2021年3月19日号より)
過去40年の東大合格者数と順位 (週刊朝日2021年3月19日号より)

 1983年の開校と歴史が浅く、しかも県立校が強い千葉で、渋谷教育学園幕張が東大合格者数を飛躍的に伸ばしている。

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 初めて合格者が出たのは87年。98年に2桁台に乗ると、最近は70人台に。東大合格者数ランキングでは9年連続でトップ10入りをしている。昨年は27人が海外大に合格するなど留学希望者を引きつける学校として知られてきたが、東大合格実績でも共学校ナンバーワンと躍進中だ。

 中高一貫校の強みを生かす。中学1~2年は基礎固めの時期と位置づけ、高校2年から文系・理系のクラス分けをするなど、6年間で計画的に学力を伸ばす。主体性重視の進路教育にも力を入れており、2017年から東大見学ツアーやガイダンスを始めた。

「トップレベルの研究環境で学びたいという生徒が増えている以上は、きちんと態勢を整えたいと思いました」(井上一紀進路部長)

 ただ、田村聡明副校長は言う。

「よく渋幕は『進学校』と捉えられますが、私たちにはそのような認識はありません」

 実際、落語家の立川志の春さん(44)、俳優の田中圭さん(36)ら個性豊かな卒業生が輩出している。

 卒業後に東大工学部に進んだ堀込泰三さん(43)も、その一人だろう。高校時代の同級生と大学卒業後に結婚。長男が誕生後、一時は専業主夫となった。現在は団体理事や翻訳業などの仕事を掛け持つ。「男性だから」「東大卒だから」仕事を続けるという固定観念にはとらわれなかった。

「高校時代、個性的な同級生や先生に囲まれ、『いろいろな生き方があっていい』と思えるようになったことは、その後の進路選択にも少なからず影響したと思います」

 同校には「自調自考」(自ら調べ自ら考える)という教育理念がある。授業はノーチャイム制。授業が始まる時間になったら、生徒は自主的に着席する。修学旅行のプログラムも、生徒が考える。田村副校長は言う。

「自分の行動を自分で決め、周囲の理解を得て行動をする。『渋幕的自由』と呼ばれる発想が何事にも通底しています」

 その発想で、東大に、海外大に挑戦し続ける。

(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2021年3月19日号