こうした取り組みは「町の飲み屋」でも徐々に広がりつつある。14年から東京都内でワインバーを経営する40代のオーナーは、こう話す。

「開店当初は常連たちの要望もあり喫煙可としていましたが、やはり『ニオイが気になる』との苦情が出てきました。ワインを中心に扱う店ですから、それも当然かもしれません」

 低温加熱式たばこのみOKとしていた時期を経て、1年後には全面禁煙へと踏み切った。

「全面禁煙後は、特に他のお客さまからの苦情はありません。『三次喫煙』についても同様です。問題なのは、飲食に影響を与えるほどのニオイで、喫煙者はそのニオイに気づきにくくなっていることでしょう」

 その一方で、オーナー自身も20代のころに喫煙していたこともあり、規制の厳しさに同情することもあるという。

「現状ではたばこを吸える場所がほとんどないですからね。喫煙自体は国が認めていることですから、喫煙環境の整備はもっと進んでもいいと思います。もちろん、マナーを守ることが前提ですが」

 喫煙への規制が厳しさを増すなか、屋内で喫煙場所を失った「喫煙難民」の多くが向かう先は屋外の喫煙所となる。しかし、利用者数の増加により、比較的大きな喫煙所でも混雑が常態化しつつある。20年4月から5月の緊急事態宣言下では、都内の公共の喫煙所が閉鎖されたため、周辺で吸い殻のポイ捨てなどが散見された。現在は閉鎖が解除されている喫煙所がほとんどだが、喫煙者数と喫煙所数のミスマッチは相変わらずだ。

 先の「たばこのマナーに関する調査」によると、喫煙者の89.3%、非喫煙者の77.8%が「マナー違反による『望まない煙』を減らすには、ある程度喫煙所は有効」だと回答している。喫煙所数の増加は、喫煙者のマナー向上を後押しする効果も期待できるのではないだろうか。

(原子 禅)