2020年4月に改正健康増進法が全面施行されてから、まもなく1年が過ぎようとしている。施行後は、大型飲食店やオフィス、商業施設などでは専用喫煙室以外でたばこを吸うことが禁止され、分煙がより厳格化された。また、この法律よりも厳しい条例を設けている自治体も少なくない。

【写真】かつて、たばこを1日100本以上吸っていたのはこの人

 
 改正健康増進法は、小規模の飲食店の場合、いくつかの条件を満たせば経過措置として喫煙が可能としている。これは、店舗面積や資金的に喫煙専用室を設置できないケースに配慮したものだが、東京都の条例では、従業員がいる店舗は一律屋内禁煙だ。これにより規制対象となる飲食店は、全国では45%だが、都内では84%と2倍弱まで跳ね上がる。そして、いまでは都内の喫茶店や居酒屋のテーブルでたばこを吸う人の姿を見かけることは、ほとんどなくなった。

 非喫煙者だけでなく喫煙者も、20年4月からの「変化」を実感している。ネオマーケティングと日本たばこ産業が20年10月30日から11月4日に行った「たばこのマナーに関する調査」(全国20歳以上の男女10000人対象)によると、20年4月以降、全体の66.7%(喫煙者74.2%/非喫煙者64.3%)が「飲食店などで禁煙になったお店が増え、たばこの煙を迷惑に感じる場所が減った」と回答した。「煙害」は徐々に減ってきているといえるだろう。

 飲食店以外でも兵庫県などでは、子どもや妊婦と一緒にいる部屋や自動車内での喫煙を禁止(罰則規定はなし)する条例を制定している。企業でも屋内全面禁煙のほか、勤務時間内の禁煙の実施、喫煙者を不採用とする動きも出てきている。さらに最近では、「三次喫煙」という言葉を耳にするケースも増えてきた。「三次喫煙」とは、喫煙時の副流煙などが毛髪や衣服、ソファ、カーペットなどに付着し、たばこを消した後も健康に影響を与えるというものだ。小売り大手のイオンは、21年3月までにグループ従業員約45万人を対象とした「就業時間内禁煙」と「敷地内禁煙」を開始する。その目的は「受動喫煙」と「三次喫煙」の防止だ。
 

次のページ