■お酒をやめても友人関係は維持

 桜井さんは、その友人のことを、酒への愛が強い「お酒信奉者」だったと感じている。桜井さんも同じ仲間の「お酒信奉者」とみられていたのだろうと。

「酒を飲むことで仲良くなれると信じているお酒信奉者っていますからね。その考えを否定するつもりはありませんが」

「お酒信奉者」は、とにかくお酒を飲みたくなり、一人では行きたくないからと誰かを誘うというのはよくあることだ。その人の目的は話をすることは二の次で、とにかく誰かとお酒を飲むこと。

 お酒をやめたことで、交友関係に多少の変化があったとも桜井さんは考えている。

「ただ、飲みには行きますよ。そこではお酒ではなく、ノンアルを飲んでます。僕の場合、お酒をやめてすぐにコロナ禍になり、その後お店を始めたので、生活が激変しました。だから以前ほど頻繁には酒席に行けなくなりました」

 新たな友人については、「かつてはお酒を飲む人としか接点がなかったけど、お酒を飲めない、飲まない人と知り合い、そんな人たちの中にも面白い人がいるのを実感しました。よく考えればお酒を飲める、飲めないとか、その人の魅力には関係ないんですよね」(桜井さん)

 交友関係の質が以前と変わったとしみじみと話した。

 桜井さんのお話を聞きながら、さて自分はどうかと考えた。確かに、酒をやめたことで酒席へ出かける機会は減った。しかし、いまのところ友人関係には何ら変わりはない。

 記者の友人の中には酒を飲まない人もいて、キャンプなどのアウトドアを楽しむ際、車の運転を買って出てくれたりして、とてもありがたく感じていた。今度はそうした役割を自分がやればいいのだと気がついた。

 石井さんのように、これまでと変わらず友人関係を続けられる人もいるし、藤田さんのように面倒な人付き合いを減らすこともできる。そして、桜井さんのようにお酒を飲めない人たちと知り合うこともできる。

「飲みに行こうよ」と唱えずとも、友人は作れるし、友人関係は維持できるのだ。(本誌・鮎川哲也)

週刊朝日  2023年2月10日号

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