「お酒をやめたと言うと、逆にいろいろ聞かれます。山での私の動きを見て、お酒をやめることを考えた友人もいます。それだけ軽やかに歩いているように見えるのでしょうかね」
石井さんによると、友人関係は何も変わっていないそうだ。
一方で、お酒をやめたことで友人関係を制限した人もいる。会社員の藤田吾郎さん(54)がそうだ。よく笑う藤田さんは場が明るくなるからと何かとお酒の席に誘われることが多かった。藤田さんもその誘いについ乗ってしまい、二日酔いで次の日を無駄にしてしまうことも。二日酔いで済めばよいが、その翌日にも酒が残り、自己嫌悪に陥ることも多かったという。
「このままでは人生が無駄になる。そう思い、お酒をやめることを決意しました」
誘われるままに出かけた酒席では自分は盛り上げ役となっていたが、心から楽しんでいたのだろうかと疑問を持つようになった。なんて無為な時間だったのだろうかと少し後悔もしたという。
「お酒をやめたとは言いましたが、なぜやめたかは言えなかったのです。理由を説明するのが面倒だったので……」と藤田さん。
すると、酒席への誘いが減っていった。そんな中でもお酒を飲むという目的ではなく、純粋に会いましょうという友達からは連絡があり、そういう人とだけ会うようになった。
「気を使わなくていい人とだけ会うようにしました。友達とは本来そういう存在ですよね」
と藤田さんはにこやかに話した。
「飲むとどうしても長くなってしまいますよね。長い時間、話しても何を話したかわからなくなっていました。それがなくなったのはいいですね」
藤田さんは本当の友人を再確認したと強調した。
ソバーキュリアスの先達とも言える、ローアルコホリックカフェ「マルク」のオーナーで小説家の桜井鈴茂さんにもお話を聞いてみた。
「お酒をやめたと言ったら、急に連絡をくれなくなった人もいます。今まで会っていたのは私に会うためではなく、単にお酒を飲むためだったのかって、少しショックでした」