そして大阪にも、大阪伝統の押し寿司を進化させた「箱寿司」という郷土料理があります。
にぎり寿司が江戸で生まれて進化してきたのに対し、大阪では古くから酢飯を木型に入れ、サバやアジなどをのせて、上からぎゅっと押し固めた「押し寿司」が庶民の間で親しまれていました。江戸では、にぎり寿司を屋台で食べていましたが、押し寿司は、主に家庭で作られていました。
大阪名物「バッテラ」も、押し寿司の一種です。
酢飯に上に薄く切ったしめさばをのせ、その上に白板昆布と呼ばれる薄い昆布をのせて押し固めたのがバッテラです。バッテラが生まれた明治時代の中期には、サバではなく、コノシロで作っていました。その後コノシロがとれなくなって値段が上がったため、年中安定してとれるサバで代用するようになったんです。
ちなみにバッテラという変わった呼び名は、ポルトガル語で「小船」を意味する「バッテイラ」に由来しています。コノシロで作った押し寿司が、小船のような形をしていたからということのようです。
そして、この庶民的な押し寿司を「もっと豪華で、寿司屋にしか作れないものにできないか」ということで、大阪のお寿司屋さんが明治中期に考案したのが「箱寿司」です。
箱寿司は木型に酢飯を入れたあと、しいたけなどを敷き、その上にさらに酢飯を入れて、最後にマダイの酢漬けや穴子の甘辛煮、エビなどの豪華なネタをのせて、最後に上からぎゅっとと押し固めたものです。押し寿司と違って、切り分けて食べることが多かったようです。
このように箱寿司はそれなりの手間ひまがかかることもあり、出す店も減ってきているようです。
くら寿司では、4月22日にオープンする、グローバル旗艦店「大阪・道頓堀」のオープン記念として、マグロ、エビ、コハダ、サーモンを使った「大阪箱寿司」を、期間限定で、道頓堀店と、東京の浅草ROX店で販売します。同時に、この二つのお店では、アメリカの郷土寿司とも言えるロール寿司や、台湾のくら寿司でしか味わえない珍しいお寿司も味わえます。
興味がある方は、ぜひこの機会にどちらかのお店で召し上がってみてください。
○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長
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