突然イライラしたり、不意に涙が出てきたり、生理前は自分が制御不能になる――。月経前の心身の不調を医学的には「月経前症候群:PMS(Premenstrual Syndrome )」や「月経前不快気分障害:PMDD(premenstrual dysphoric disorder)」という。数年前に比べれば月経について知る機会は増えているようだが、現在も学校でPMSやPMDDについて語られることはほとんどなく、女性でさえ、大人になってから自分の症状を自覚するケースは少なくない。
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「生理!生理!生理がうつる!」
男子たちがはやし立て、女子たちが怒ると逃げていく。
「おもひでぽろぽろ」(1991年、高畑勲監督、スタジオジブリ)に、こんなシーンがある。小学5年生の主人公のタエ子は、保健室に女子だけ集められ、先生から生理の仕組みについて教えられた。男子たちは何をしていたのかたずねるが、女子たちはそろって口をつぐむ。ところが1人の女子が話してしまったことで、タエ子たちは男子たちからからかわれるようになる。
一定の年齢以上の女性ならば、タエ子のような経験をした人は少なくないだろう。
PMDDの症状に苦しんできた中部地方在住のAさん(30代・既婚)もその一人だ。小学5年生のころ、男女別々の教室に集められ、女子は女性の身体の仕組みや月経の役割などを学ぶ授業を1時間受けたが、男子はその間、性や月経とは全く関係のないテレビを見ていたという。男子に「何してた?」と聞かれ、思わず言葉を濁すと、かえって男子の興味・関心を増長させ、気まずくなってしまった。
「小学校の月経教育の時間にPMSやPMDDのことを学んでいたら、長い間、1人で苦しまずに済んだし、職場でも家庭でも、もう少しうまく対処できたかも……」
現在、Aさんはこのように話す。Aさん自身、月経前の不調や、それによる職場・家庭での対処に悩み、PMDDを自覚して医療機関にたどり着くまで時間がかかったからだ。