田原さんも60歳のころには、がんと間違われるぐらいに“激やせ”して、大変だったといいます。相当、無理をされていたのでしょう。
紆余(うよ)曲折があっても、これまで仕事を続けてきたのは、私も田原さんも仕事が何よりも好きだからです。仕事をすることが、イコール生きることでもあるのです。
田原さんは、理想の最期は「朝生(朝まで生テレビ!)」を無事に終わらせて、その場で眠るように死んでしまうというものだそうです。私も仕事中に病院の廊下で倒れて、看護師さんの両腕に抱かれ、胸の谷間に顔を埋めて最期を迎えるのが理想です(笑)。ふたりとも死ぬまで仕事ができたら、本望なのです。
そのためには、老いとうまく付き合うことが必要になります。その方法について私と田原さんで一致するものが多くて、驚きました。「つき合いを悪くする(面白くないつき合いは断る)」「悩まない(終わったことは忘れる)」「好きなものしか食べない」などです。
最近、私は働くにしても、机に向かっているのではなく、立ち働くのが好きだと気づきました。そのためには足腰を丈夫に保つ必要があります。田原さんもそれには、注意されているようです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年5月21日号