帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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田原総一朗さん (c)朝日新聞社
田原総一朗さん (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「90歳まで働く」。

【写真】田原総一朗さん

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【現役】ポイント
(1)90歳まで働くには人生にビジョンを持つ必要がある
(2)仕事をすることが、イコール生きることでもある
(3)死ぬまで仕事ができるように老いとうまく付き合う

 本誌で「ギロン堂」の連載をされている田原総一朗さんとは、2度ほど対談をしたことがあります。私より2年先輩なのですが、とてもエネルギッシュに語られるので、感心しました。その田原さん著の『90歳まで働く』(クロスメディア・パブリッシング)という本を読みました。

「60歳で定年などとは言っていられない時代になった。それからさらに30年は働こう」と提案する内容なのですが、85歳で現役の私としては、我が意を得たりという気持ちになります。

 しかし一方で、「80歳になっても働けるあなたたちは幸せだ。私にはそんな仕事がない」という声も聞こえてきそうです。田原さんはこの本の中で、そうならないためには人生にビジョンを持たなければいけないと主張しています。田原さんは42歳でフリーランスになったことで、自分のビジョンを描くことができたといいます。

 振り返ってみて、私がビジョンを持てたのは46歳のとき、西洋医学一辺倒の医療に見切りをつけて、自分の病院を開設したからでした。そこからホリスティック医学の確立という大きな道筋が見えてきたのです。私はいまもまだ、その道中にいます。

 そういう私も、80歳になるころには「診療はもうやめにして、講演で食べていけないかな」などと虫のいいことを考えたことがあります。長い付き合いの看護師に「現役でない先生の話なんて、誰も聞かないわよ」とたしなめられて目が覚めましたが(笑)。

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