機構によると、同じく個人の年金情報をインターネットで知らせる「ねんきんネット」の年金額試算コーナーでは、11年のサービス開始当初から代行部分を含めた金額が出るようにつくられていたという。とすると、50歳以上の定期便だけが、代行部分を除き続けていたことになる。
代行部分は国から支給されるものではない。一方、50歳以上の定期便は、前述したように実際の支給額を意識している。そうしたことが原因で、代行部分は除かれたのだろうか。
それはともかく、今年度、増額された定期便を受け取る人は広範囲に及びそうだ。Aさんのようなキャリアの女性は50代に大勢いるからだ。何しろ基金は“平成ヒトケタ年代”の全盛期には1800を超え、名だたる大企業や業界団体が競うように運営していた。また、企業年金連合会の資料によると、中途脱退者は累計2900万件以上にのぼっている。
増額幅は、基金加入期間と当時の収入で人それぞれだ。“得”したわけではなく、実際もらえる金額に直った格好だが、基金のプラスアルファ部分は「今回加わった代行部分には含まれていない」(機構広報室)というから、少額とはいえ、さらなる上乗せも期待できそうだ。
もちろん50代主婦に限らず、基金があった企業に勤務経験がある中途脱退者の50代男性も、同じく増額となる。ただ、その後も厚生年金に加入し続けていれば、50代主婦ほど目立った増額にはならないとみられる。
年金実務に詳しい社会保険労務士の三宅明彦氏によると、もう一つ、目に見えて増額となるケースがあるとのことだ。
「基金が続々解散していた時に、代行部分を含めて基金丸ごと企業年金連合会に移管した基金がありました。いくつか大企業も含まれていましたね」
なるほど、それらの会社の50代社員なら原資が積み上がっていそうだ。
「定期便の年金額が50万~60万円増額していても不思議ではありません」(三宅氏)
何にせよ“増額”はうれしいものだ。Aさんは上機嫌でこう言った。
「増額の理由もわかり、勤めていたころの輝かしい青春時代を思い出すこともできました。コロナ禍の閉塞(へいそく)感の中、今年の定期便はいい誕生日プレゼントになりました」
同様に心当たりのある方は、楽しみに定期便をお待ちあれ。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2021年5月21日号