今年度の「ねんきん定期便」には、前年度までにはない記述が小さくある。これが増額の理由だ
今年度の「ねんきん定期便」には、前年度までにはない記述が小さくある。これが増額の理由だ
(週刊朝日2021年5月21日号より)
(週刊朝日2021年5月21日号より)

 かつて会社勤めだった50代の専業主婦は、今年度の「ねんきん定期便」に注目したほうがいい。記載された年金額が昨年度より増えている人が数多くいるからだ。大きい会社に勤めていた人ほど、その可能性は高くなる。増額のカギは「厚生年金基金」への加入の“有無”である。

【図で見る】「50代主婦」の年金の構造はこちら

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「エッ、ウソ! 金額がこんなに増えている」

 東京都内に住む50代の主婦Aさんは4月中旬、自宅に届いた「ねんきん定期便」(以下、定期便)を見て驚いた。65歳からもらえる「老齢厚生年金」が、昨年は「6千円台」だったのに、「13万円台」になっていたからだ。

「昨年、夫が60歳定年を迎えたので、老後のこともあり、昨年届いた定期便はじっくり見ていました。それで数字を覚えていたんです。厚生年金の金額が『少ないなあ~』と思ったのですが、そのままにしてしまっていました。でも、本当にビックリです」

 几帳面(きちょうめん)なAさんは、毎年来る定期便を大切に保管している。過去の定期便を並べると、さらに不思議なことに気づいた。

「40代の時の定期便には、ちゃんと13万円台の数字が出ているんです。それが50歳になった途端にガクンと下がっていました。もっとも、今までまったく気づきませんでしたが……」(Aさん)

 それが今年また、13万円台に“復活”したのだ。いったい何が起きているのか。

 定期便は、2009年から毎年、年金加入者らに誕生月に送られている。直近1年間の加入実績や保険料納付額、将来の年金額などを確認してもらい、年金制度への信頼を高めることを目的にしている。

 Aさんの加入記録を見ると、6年余の厚生年金と国民年金の第3号被保険者(専業主婦が多い)期間が20年以上ある。

「大学を出て銀行勤めをした後に結婚、“寿退社”で会社を辞めました。その後は2人の子を育てながら主婦をしていました。私たちの世代に多かったパターンです」(同)

 このキャリアだと、厚生年金に結び付くのは銀行勤務の期間だけだ。改めて50歳以降のAさんの定期便を眺めていると、今年度の定期便に、前年度までにはない新たな記述があることがわかった。「老齢年金の種類と見込額」の下にこうある。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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