「厚生年金期間の報酬比例部分には、厚生年金基金の代行部分を含んでいます」
Aさんに聞くと、確かに勤め先の銀行に厚生年金基金があったという。
「私も入っていましたね。そういえば退職時に原資が基金の上部団体(厚生年金基金連合会、現在は企業年金連合会)に移るという説明を受け、その団体から引き継いだ旨の通知も受け取りました」
厚生年金基金は、かつて企業年金の主役だった。国の厚生年金の一部を自ら運用して支給する「代行部分」が主眼で、運用しだいでそれに「プラスアルファ分」も上乗せできた。ただし、バブル経済崩壊後の低金利で運用が苦しくなり、代行部分を国に返上したり解散したりで、今ではほとんど残っていない。
Aさんのような加入期間が短い「中途脱退者」の原資は現在、確かに企業年金連合会にあり、その中には「代行部分」も含まれている。とすると、それが加わったのか。
日本年金機構広報室に問い合わせると、“ビンゴ!”だった。
「おっしゃるとおり、今年度から50歳以上の方の定期便の年金額に、厚生年金基金の代行部分を加えるようになりました。もともと50歳未満の方へは代行部分を加えてお出ししていて、50歳未満と50歳以上で取り扱いが異なっていました。お客さまからの照会もあって、連続性の観点から50歳以上の取り扱いを変更することにしました」
なるほど、それでAさんの年金額は50歳を境に変わったのか。しかし、少し補足が必要だろう。
定期便は「50歳未満」と「50歳以上」では扱う年金額の情報が異なる。50歳未満は「これまでの加入実績に応じた年金額」で、老後が近づいてくる50歳以上は「60歳まで今と同じ状況で加入し続けたと仮定した場合の見込額」だ。つまり、50歳以上のほうが実際にもらう年金額に近い。機構の説明では、前者は代行部分を含め、後者は含めていなかったというのだ。
Aさんの年金は、会社勤務が短く専業主婦時代が長いので、大きい老齢基礎年金に小さな老齢厚生年金がのっかっている格好。基金に加入していると、網掛けした代行部分が老齢厚生年金の中にある。