この点について、テレビ朝日コメンテーターの玉川徹氏は、「日本人ってそんなもんですかね。もうオリンピックの2週間ですっかり忘れて、あー良かったねって言って投票するんだろうか」と述べている。国民はそんなにバカではないと言いたかったのだろう。
逆に言えば、菅総理は、玉川氏とは逆のことを考えているということだ。菅総理の余裕の裏にあるもう一つの要因。それが、菅氏が安倍前総理から引き継いだ哲学である。
私は、今から7年前の2014年7月18日にこうツイートした――安倍さんの政治哲学:「国民は馬鹿である」 1.ものすごく怒っていても、時間が経てば忘れる 2.他にテーマを与えれば、気がそれる 3.嘘でも繰り返し断定口調で叫べば信じてしまう 私たちは、そんなに馬鹿なのでしょうか?――
安倍政権では、とんでもないスキャンダルや失政で内閣支持率が落ちてもすぐに回復し、不利だと言われた選挙でも必ず自民党が大勝した。国民は今もそれほど馬鹿なのか。それとも、こうした経験を経て、覚醒したのだろうか。玉川氏と菅総理、どちらが正しいのか。秋にはその答えが出る。
※週刊朝日 2021年6月25日号
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など