しかし、最近、この話は全く聞かなくなった。それもそのはず、実は、日本の順位は20年版世銀ランキングで、OECD諸国中18位と下がっている。世界全体では、28位のロシアにも及ばず29位。31位の中国に抜かれる寸前だ。もはや先進国とも呼べない状況なのである。失態続きの経済産業省と菅政権は、こうした実態を隠すために、今回の実行計画にこの目標は掲げなかった。
ちなみに、OECD3位は遥か彼方でほぼ実現不可能なのだが、その3位の座にいるのは、何と菅政権が大嫌いな韓国だ。「目標は韓国です」とは、恥ずかしくて言えるはずもない。選挙前に最大の支持層である岩盤右翼の人々がそれを聞いたら、気絶するかもしれない。菅総理は、こうした事実を隠すため、「日本が世界の成長を牽引して行く」と述べている。本気で言っているとしたら「誇大妄想」というしかないだろう。
不都合な真実から目をそらしても状況は改善しない。日本の産業を立て直すには菅政権に退場してもらうしかなさそうだ。
※週刊朝日 2021年7月16日号
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など