6月18日、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)と「成長戦略実行計画」を決定した。
しかし、その中身にはほとんど意味はない。これらの文書に書かれた項目のほとんどが、各省庁の予算要求の根拠にするための作文に過ぎず、何年か経って振り返ると、大きな目標のほとんどが未達成のままだからだ。
今回の発表劇を見て、私は、2013年6月14日を思い出した。「日本再興戦略」が発表された日だ。12年12月に総理の座に就いた安倍晋三氏は、海外に出かけると、「ジャパン・イズ・バック」、「バイ・マイ・アベノミクス」と胸を張り、大改革を断行するとPRしていた。ところが、当日示された日本再興戦略の中に描かれた「改革」は小粒なものばかり。市場の期待は大きく裏切られ、安倍総理の会見途中で株が暴落。それ以来、安倍総理がいくら大騒ぎをしても、成長戦略に期待する向きはなくなった。
今回は、菅義偉政権最初の成長プランだから、注目度は上がるはずだったが、はっきり言って誰も期待していなかった。ただそれは、菅政権にとってむしろ幸運だったようだ。期待が低かった分、落胆も小さく、市場への影響もなかったからだ。
90年代には携帯電話、液晶パネル、太陽光発電、風力発電などで日本企業が常に世界の上位を占めていたが、それは遠い過去の栄光だ。IT化では、先進国の最後尾に取り残され、先週は、半導体不足で自動車生産が停滞し、鉱工業生産が大幅減少と報じられた。昔は、世界の半導体市場で多くの日本企業がランキング上位を占めていたのが夢のようだ。この間、成長戦略が毎年出されたが、何の意味もなかった。
しかし、だからと言って成長戦略が不要という訳ではない。特に、経済の停滞が著しい日本にとっては、過去の失敗と決別するためにも、新規事業がどんどん生まれ育って行く「ビジネス環境」の整備は喫緊の課題だ。
実は、上述の13年の「戦略」は、そうした認識に基づき、「20 年までに、世界銀行のビジネス環境ランキングで日本が現在の先進国15 位から3位以内に入る」という目標を記していた。先進国とは、OECD(経済協力開発機構)加盟国である。