私は言いました。
「私の気持ちは手術をしない方に傾きつつあります。でも、手術ができなくなった時点で後悔する気がするんです。このまま何もしないのは、見殺しにしてしまうようで、ゆうに申し訳ない」
「お母さんが手術をしないと決めるのは、その方がゆうちゃんの苦痛が少ないと思うからですよね? それは全然見殺しじゃない。私は医療というのは、必ずしも命を助けるだけではないと思っています」
しばらくの沈黙の後、あーちゃんにこう言われました。
「ちーちゃん、心配していた感染症のリスクね。確率に幅があったとしても、起きた人には100%で、起きなかった人には0%なんだよ。ゆうちゃんに起きるか起きないかの話。私もリスクは高いと思う」
「……わかった。やめよう」
ところが、そのとたん、次女の表情が一気に険しくなり、私をにらみました。
男子たちは「まじかー」「じゃあ、死んじゃうの?」と、今ひとつ状況を理解しきれずに、ひとごとのように話していました。次女は「ママひどいよ」と目で訴えながらも、必死で大人たちが話す意味を聴いて、解読しようとしているように見えました。
■「死ぬって、いつ?」
「ぴぴちゃん、どう思う?本当に何を言ってもよいんだよ?」
誰が何度話しかけても無言でしたが、しばらくすると、次女はボソッと「死ぬっていつ?」と言いました。
「それはまだ誰にもわからないんだよ。でも、ぴぴちゃんはこれから、中学生、高校生、大学生になって成人式が来て…と、どんどん大人になっていくけれど、もしかしたらゆうちゃんはその年齢まで生きられないかもしれないんだって。一般的には、あと4年くらいの間に、命が危険になるような症状が出ることが多いみたいだよ」
次女は無表情で「ふ~ん」と言うと、「はぁ~」とため息をついて立ち上がり、隣の部屋へ行ってしまいました。
実はこの頃、私は自分の気持ちをブログに書いて投稿しており、友人たちを含め本当にたくさんの方から日々連絡をいただいていました。命に関する新聞の特集の写真を添付して送ってくれた方や、お子さんを亡くされた方、お孫さんがPVL(脳室周囲白質軟化症)だという方が、かるがもCPキッズのホームページ宛にメールをくださったりもしました。