あーちゃんが質問に丁寧に答えている間、ター先生が、ずっと強張った顔のまま全くしゃべらない次女に話しかけました。
「ぴぴちゃん、どう思う? こう聞いても、ぴぴちゃんの言葉で何かが決まってしまうわけではないから、なんでも思ったことを言ってよいんだよ?」
■たくさん考えて結論を出す
「お母さん、ここのところずっと泣いていたでしょ? ぴぴちゃんもお母さんを見ているのはつらかっただろうし、今こんな話を聴くのもつらいかな。双子だもんね。でもね、ぴぴちゃんには、お父さんやお母さんや先生たちがたくさんたくさん考えて結論を出すんだということだけは知っていてほしくて、今日は話に入ってもらったんだ」
次女はター先生の言葉に頷いたものの、やはり黙ったままでした。
私の後ろにはマットに寝ている長女がおり、DVDで好きな曲が始まるとウキャッとなり、終わるとウーッと声を出して怒ります。
本当にこれからそんなに苦しくなるの? とまだ信じられず、でもター先生から見立てを聞くと、楽観視できる状態ではないと伝わってきました。
■リスクが高すぎる
「メールにも書きましたが、もし手術をしたとして、術中死や、術後早期の合併症で命を落とすことになったら、お母さんが立ち直れなくなってしまうのではないかと思います。私の考えに誘導するのはよくないですが、このオペはまだ症例数が少なくて、数年後の予測もできず、ゆうちゃんにはリスクが高すぎる」
ター先生からは、前日にこんなメールをもらっていました。
「手術を受けた場合に起こり得るリスクは2つ。
・術中術後の合併症で強い痛みを味わうだけでなく命を落とす結果になる。
・手術が成功しても、長期的に歪みが出て手術をしなかった場合と同様の苦痛が出る。
手術をしなかった場合も2つ。
・呼吸器系や消化器系の合併症で命を失う。
・手術が成功した場合と比べると短命になる。
『死』は誰にでも等しく訪れます。お母さんも私もそれは同じです。手術をせずに来るべき死が迫った時、どうやってゆうちゃんに死を迎えさせてあげるのか、どうやってご両親が死を受け入れるのか。それを考えることにエネルギーを注いだ方がよいのではないでしょうか? それが来た時には、私も一緒に考えることはできます」