目前に迫った東京五輪。新型コロナウイルスの第5波の到来する中、開催の中止を求める声やIOCに対する抗議の声が日増しに高まっている。東京では、市民団体らがデモ行進を実施。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が広島を訪問したことについても「パフォーマンスだ」などと厳しい声が上がった。
「ウソとワイロのオリンピック、やっている場合か」「IOCは出ていけ、福島行くな、札幌行くな、さっさと帰れ」
五輪開催までちょうど1週間となった16日夜、東京で五輪中止とIOC委員の広島・長崎訪問への抗議を訴える、市民団体らによるデモ行進があった。参加者120人が、「五輪に殺される」「中止だ 中止」などと書かれた横断幕やプラカードを手にし、「オリンピック、やっている場合か」とシュプレヒコールを上げながら、五輪の車両基地になっている築地市場の跡地を出発。選手村付近を通過し、組織委員会が置かれているビルの前まで練り歩いた。
この日、東京都の新規感染者数は3日連続で1000人を超えた。デモ参加者の中には、コロナ禍の開催に危機感を抱いた医療関係者の姿もあった。羽田空港付近の発熱外来に勤める女性医師は、第5波の到来を肌で感じているという。
「ほんのここ1週間のうちに、空港で働いているという人が1日に6人ほど訪れるようになっています。毎日1人はPCR検査で陽性です。確実に増えていますよ」
この女性医師は、5月末に北海道で感染者が増えた際、臨時で江別市の医療機関に派遣されたという。その経験から、今の状況での五輪開催に警鐘を鳴らす。
「5月5日に札幌でマラソンのテスト大会があった後でした。私は5日間の派遣でしたが、とんでもないひっ迫状態でした。それでも地方はまだ行政と医療機関の連携がとれたほうだったと思います。これから大都市の東京がそうなると思うと、もう、恐怖です。五輪中止が最大の感染予防です」
医師は増え続ける感染者への対応だけでなく、ワクチン接種の業務も並行している。「現場に五輪関連のコロナ患者を看る余裕はないのです」と嘆いた。