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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「感謝の気持ち」について。

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【ありがとう】ポイント

(1)「ありがとう」は心の底から湧き上がる思い

(2) 深い感謝の気持ちをお持ちだった楊名時先生

(3)いまを生きていることへの感謝の気持ちを深めよう

 いつもの店に入り、いつもの席に座り、これまたいつものウェイトレスさんに飲み物とおつまみを注文します。注文を復唱したウェイトレスさんが調理場のほうに向かいます。それから生ビールが現れるまでのわずかな時間が、私にとっては何よりの至福のときです。一日働いたあとの心地好い疲れがじわぁーと全身に行きわたり、私の喉も胃袋も生ビールを迎え撃つ臨戦態勢に入ります。

 そしてウェイトレスさんが生ビールのジョッキを私の前に置くと、思わず、「ありがとう!」という言葉が、口をついて出ます。ぐいっと最初の一口が胃袋に落ちるや否や、喜びが全身を満たしていきます。

 そこへ、最初のおつまみ、鯛の酒盗和えが現れると、これまた思わず「ありがとう!」が口から出ます。

 次いでお刺し身の三種盛りの大皿が現れると、またまた「ありがとう!」です。

 この「ありがとう」の連発は決して社交辞令というものではありません。心の底から湧き上がる思いなのです。この感謝の気持ちが伴うからこそ、わが晩酌は養生になっているのだと、うそぶいています。

 感謝の気持ちで思い出されるのが、私の太極拳の師、楊名時先生です。先生がお元気な頃には、月に3回ぐらい、二人きりで酒を酌み交わしていました。

 ただ、たわいのない話をしているだけなのに、杯を交わすのが、実に楽しいのです。それがなぜなのか、わからないまま、お付き合いをしていました。でもあるとき、先生のご著書の以下の文章を読んで、忽然として納得がいったのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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