「この先、仕事の第一線を退けば家にいる時間が増える。考え直すべきは、『壁』を作っているのは家族なのか、自分の方なのか、ということです」
■失敗談もさらけ出す
大塚さんは、仕事のことを、パートナーにも子どもにも積極的に話すようにしてみては、と提案する。
「いまはコロナ禍で在宅勤務も多いのでいい機会。相手のことを知れば知るほど親近感がわくのは家族でも同じです。自分の失敗談など『弱み』をさらけ出すのも大切。たとえば子どもが受験に失敗したとき、自分の過去の失敗を飾らずに話す。それが子どもに共感を生み、コミュニケーションが促進されます」
どうしても家族と価値観が合わないとき、一歩を踏み出す選択肢もある。冒頭の女性は現在、「リコカツ」(離婚活動)の真っ最中だ。
「二人の子どもも大学生になり、夫婦二人の時間、となったところで離婚を決意しました。妻や母はこうあるべき、が強い夫からの『ガラスの天井』に抑えられてきたので、もう限界。親が元気なうちに親孝行をちゃんとしたい。夫の目を気にしていつも義理親が優先。実親には何もできていなかったので」
子どもたちもずっと離婚に賛成してくれていたという。
「離婚後は自分の時間も大切にしながら、子どもたちとは一緒に旅行したり、子ども時代とは違う付き合い方をしたい。また、仕事や子育てをしているだけではない自分の姿を子どもたちには見せておきたいですね」
メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんは、これが大事な視点だと言う。
「子ども中心の生活をしてきた親の中には、子どもが巣立っていくことでむなしさを感じる『空の巣症候群』になるケースもあります。でも、もう役割が変わったことを理解し、『大人としての子どもとの関わり』を考え、楽しむ。そして親は親で、自分らしい人生を生き、その姿を子どもに見せる。そうすることで子どもは、自分の人生を選んでいくことができるんです」
50歳ともなれば、年老いた自分の親と関わることも増える。