投手陣で露呈したのが慣れない役割で投げることの難しさだ。0対0の同点で迎えた7回、日本が2番手で送りだしたのは普段チームで先発を任されている青柳晃洋(阪神)だったが、青柳は3安打を浴びて2失点と力を発揮することができなかった。大事な初戦で終盤のスコアレスの場面で登板するということは、リリーフのスペシャリストとでも簡単ではなく、青柳を責めるのは酷というものだろう。左打者が多い場面で右のサイドスローの青柳を投入したという点も疑問が残ったが、左投手でチームでもリリーフを任されている投手が岩崎優(阪神)しかいなかったというのも不安が残った。は餅屋という言葉があるが、大事な場面で左打者をしっかり抑えられるサウスポーが不足しているというチーム編成は、今後の試合でも響いてくることになりそうだ。

 もちろん初戦で得られた収穫も確かに存在している。まず何よりも大きかったのは先発を任せられた山本由伸(オリックス)がしっかりと試合を作ったという点だ。立ち上がりは本調子の時と比べると少し不安定なところもあったが、それでも尻上がりに調子を上げて6回をわずか2安打に抑え込んだのは見事という他ない。侍ジャパンの新エースとして今後も大事な場面を任せられるだろう。一方の野手では3番の吉田正尚(オリックス)がさすがの打撃を見せ、コンディションが心配された柳田悠岐(ソフトバンク)もしっかりと結果を残している。更にチーム最年少の村上が9回の大事な場面でタイムリーを放つなど、実力をしっかり発揮したこともプラス材料だ。

 今後重要になってくるのは、やはり選手の見極めである。投手も野手も状態がよく、大事な場面で頼れる選手は誰なのか。この1試合で見えたプラス面とマイナス面から、決勝トーナメントでベストとなる布陣を探っていくことが必要になってくるだろう。首脳陣にとってもファンにとっても胃の痛くなるような展開だったものの、それでも勝ったというのは何よりの薬である。次のメキシコも楽に勝てる相手ではないが、ドミニカ戦で見えた反省を生かした戦いを見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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